わたしは戦争に反対する

 平和がわたしであるわたしが戦争に反対する。

 戦争は平和の対岸にあり、届くことはない。

(戦争は届けることを拒否することをその存在の必要条件とする。「聞き届ける」という言葉はよくできている)

 

 戦争がわたしであるわたしが戦争に反対する。

 わたしはわたしのものである。わたしはわたしを所有している。

 としてわたしとわたしは分裂している。わたしを所有するわたしはわたしでありえずわたしに所有されるわたしはわたしでありえない。

 わたしはわたしのものであることを絶対にやめない。わたしはわたしを所有することを絶対にやめない。

 よってわたしは戦争である。

 戦争に反対するはわたしのわたしへの戦争としてわたしに届けられる銃弾のように。

(肯定としての銃弾が、邪神の時空のなかで、撃つことにより届けられることがある。)

 わたしは分裂する。わたしは分割される割譲される。

 わたしはわたし以外のだれのものでもない。わたしはわたし以外のだれにも領有されない。

 わたしはわたしはわたしのものであるというわたしに併合される。

 わたしのものであるわたしはいなくなる。

 戦争が終わりわたしが終わり戦争がわたしがいなくなる。

 そのあと平和がやってくるわたしはもういない平和はわたしにやってくることができない。

 

 戦争でも平和でもないであるわたしが戦争に反対する。

 わたしはわたしのものではなく、わたしはだれのものでもない。

 だれのものでもないものへ。平和にやすらえ平和のなかでやすらえ平和においてやすらえ。

 わたしがかつて一度も死んだことがないのは一度も生まれたことがないからかもしれない。

 戦争は殺すという。

 かつて一度も死んだことがない一度も生まれたことがないかもしれないわたしは殺したり殺されたりするのが嫌だと思う。

 わたしは殺したり殺されたりするのが嫌だと思う。

 わたしは戦争に反対する。